皆様へ役立つ矯正歯科の情報を分かりやすくお伝えしている、知多 矯正歯科相談室 院長の久野昌士です。
皆さんは歯の矯正を行う際、どのような点に気を付けて、どういった流れで歯の移動が行われるか?について、詳しく知る機会があまりないかもしれません。ただ、現在矯正治療をされている方やこれからしようと検討している方は、実際に矯正時の歯の移動とはどういったものか?を認知された方が良いと考え、本日は詳しく解説をします。
【記事の更新日時】2023年11月23日12時半
矯正治療時の歯の移動について
歯を移動させる力とは?
歯に対し何らかの矯正力を加えると、その力は歯の根の部分から歯周組織の歯根膜を経て、歯の植わっている骨(歯槽骨)へと伝わっていきます。
矯正歯科治療に適した力が歯周組織に伝わると、歯の根の部分(圧迫側)で骨吸収が起こり、圧迫側とその反対側の牽引側で骨の修復がされ、適正な歯の移動が行えます。
※「矯正治療時の矯正力が適当である」と思われる歯の状態とは以下とされています。
・矯正力の働いている歯に自覚的な痛みが無い
・歯をたたいても、著しい反応がない
・歯の動揺 及び緩みが著しくない
・歯や顎の位置が処置方針どおりに移動している
・歯根膜や歯の周囲組織に病的変化が認められない
歯の移動の仕方について
歯の移動の仕方には、普段あまり聞かないフレーズかと思いますが、「歯体移動」と「傾斜移動」というものがあります。
歯体移動:歯体移動とは、歯の長軸をできるだけ傾けないように平行に移動させるようにします。
傾斜移動:傾斜移動は、歯の長軸を変えるような移動の仕方をいいます。
現在のワイヤーとブレースを使用した一般的且つ主な矯正歯科治療では、歯体移動を主にして傾斜移動も使用し歯を移動させていきます。
アソアライナーに代表されるマウスピース矯正では、傾斜移動が中心になりますので抜歯が必要な矯正歯科治療にはあまり適していないと言えます。
インビザライン等では、歯の表面へアタッチメントと言う突起を付け、歯の動きをコントロールします。抜歯症例にも対応していますが、予想外の歯冠の傾斜などに対するフォローが必要になってくるケースもあります。
固定(抵抗源)Anchorageとは?
物体がある力で引っ張られた場合、その反作用として必ず同じ力が引っ張る側にも加わります。
矯正歯科治療で歯や顎を移動させる場合も同じです。移動する目的の歯に抵抗する場所がなければなりません。
これを「固定源(抵抗源)」と言い、単に「アンカー」と言うこともあります
固定はその固定源となる部位によって、顎内固定・顎間固定・顎外固定に分けられます。
顎内固定:「抵抗源となる歯」と「移動される歯」が同じ顎の中にある場合を指します。
顎間固定:歯や顎を移動させる場合に、抵抗源を対顎に求めた場合を言います。一般的にはエラスティックゴムを使用します。牽引の方向によって、Ⅱ級ゴム・Ⅲ級ゴム・垂直ゴム等があります。
顎外固定:歯や顎を移動させる場合の抵抗源を口腔外に求めた場合を言います。抵抗源は頭部や頸部に求められます。具体的にはヘッドギア、フェイシャルマスク、チンキャップなどを使用します。
とても基礎的なことですが、歯を適正な位置に移動させるには作用と反作用の原理を十分考慮の上、矯正治療に役立てなければなりません。矯正歯科治療を進める歯科医師は、この点を意識して行っています。
——記事の執筆者紹介——
矯正歯科治療でお悩みの患者様の疑問・不安へお応えします!
知多 矯正歯科治療相談室 運営 久野歯科医院 院長 久野昌士
【院長の主な略歴について】
・昭和57年:東京歯科大学を卒業。
・昭和57年から昭和61年:東京歯科大学補綴第二講座に在籍する。
・昭和62年から平成1年:愛知学院歯学部口腔外科第二講座研究生。
・名古屋YDCAスタディグループに所属
「コンプリートデンチャー研究会」へ在籍しつつ
名古屋顎矯正研究会等へと参加。
より良い矯正歯科治療を患者様へとご提供できるよう、
新たな治療技術・歯科知識を積極的に取り入れる。
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