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【矯正歯科 症例】過蓋咬合・叢生 上顎前突 T.Y様(抜歯症例)

過蓋咬合・叢生 上顎前突の矯正歯科治療報告

知多 矯正歯科相談室の久野歯科医院 院長です。
本日もwebサイトへの掲載に関する了解の得られました患者様の治療経過を報告したいと思います。「どのように矯正治療がすすんでいくか?」を写真提示し解説していきます。

【記事の更新日】2023年7月20日 12:50

 

患者様の概要/ご来院経緯と診断

今回ご来院の患者様は当院近隣エリアに在住の16才の女性t.y様です。t.y様は小学校の頃より初期のむし歯治療でご来院されて以来、お母様とご一緒に定期健診でお越しいただいておりました。

中学1年生の頃にお母様から矯正歯科治療に関する詳しいご相談を受け、資料採取を行った上で診断しましたが、y様ご本人の矯正治療のご希望がなく現在に至っていました。
その後 高校1年生になり、y様ご本人から矯正治療開始を望まれ、お母様と共に再度ご来院をいただきました。

当院での基本検査の結果、歯肉炎の程度は軽度でむし歯はありませんでした。
口腔内写真、正貌・側貌の写真撮影、レントゲン撮影、研究用模型の採取を行い、実際の治療に関する診断をいたしました。

 

■今回の主訴は「上顎中切歯の突出」となります。

上の症例写真は矯正歯科治療前 正面のお写真です。
咬み合わせが深く、上顎左側中切歯突出しています。

また下顎の前歯が2歯先天的に欠如しています。そのためにかみ合わせも深くなっています。臼歯関係は1歯対2歯のClass1となります。

 

 

今後の矯正歯科治療【処置方針】

主な処置方針は、まず上顎左右の第1小臼歯を抜歯し、下顎前歯が2歯先天性欠如のため下顎の犬歯を側切歯に、第1小臼歯を犬歯にみたて、Class1で臼歯関係を確立するよう計画。

下顎の前歯が2歯先天的に欠如しているので、その代償として前歯、犬歯の横幅(幅径)が大きくなっています。そのために、犬歯や臼歯関係を確立することが難しい場合もあり、前歯の噛み合わせにも影響がおよぶ可能性もあります。

一般的に乳歯の晩期残存や前歯の先天性欠如があり、左右が非対称な場合には矯正治療の難易度が上がる傾向にあります。

 

矯正治療経過その1:抜歯後ブラケットの装着等

 

上顎両側の第Ⅰ小臼歯を抜歯し、上下顎に0.14インチ ラウンドのニッケルチタンワイヤーを装着し、レベリングを開始しました。

上顎右側の中切歯が大きく前方へ突出していますため、隣り合っている歯の左側中切歯と右側側切歯はゆるくゴムで寄せてあります。上顎前突でかみ合わせも深いので、下顎の前歯は歯全体の半分ほどしか正面からは見えない状態です。

 

装置/ブラケットは上顎前歯部にデンツプライシロナ社製 ゴールドスロットクリアブラケットを、下顎前歯部にはシルバースロットクリアブラケットを、そして臼歯部にはトミー社製 マイクロアーチメタルブラケットおよびチュ-ブを使用しました。

ワイヤーは3MユニテックのナイチノールスーパーエラスティクオルソフォームⅡを使用しています。

 

 

矯正治療経過その2:ワイヤーの変更

断面の四角0.16×0.16インチのニッケルチタン ワイヤーから、0.16×0.16インチ ステンレススチールのワイヤーへ交換。咬み合わせが深い点を改善できるよう、上顎ワイヤーにはカーブがつけてあります。またエアラストメトリックチェーンにて上顎犬歯の後方移動(キャナインリトラクション)を開始します。

上顎左側中切歯のブラケットポジションが良くないために、今回はワイヤーを曲げることにより暫く対応します。

咬みあわせが変化してきたので、下顎前歯のブラケットポジションも正常な位置に変更できるようになりました。これは良い兆候です。

 

 

矯正療経過その3:エラストメトリックチェーンでアンテリアリトラクションを開始

 

ブラケットポジションを変え、上顎両側の側切歯と犬歯の間へフック(突起)を立て、第1大臼歯のバンドに付いたフックからエラストメトリックチェーンにてアンテリアリトラクションを開始。

スライディングメカニクスにて行います。

 

 

治療経過その4:下顎前歯の横幅を整えるようストリッピング

前歯の咬み合わせが浅くなり、切端咬合ぎみになってきました。
下顎前歯が先天性欠如があり、欠如している分を補償するかのように前歯の横幅が大きくなっています。

下顎前歯の横幅を整えるようにストリッピングし対応します。

 

 

矯正治療経過その5:動的治療の完了

 

上顎前歯の後方移動(アンテリアリトラクション)と下顎前歯のストリッピングにより、できる限り調和をさせ、動的治療を完了しました。
臼歯関係はそれほど崩さずに、1対2歯の状態を確立することができました。

ブラケットとワイヤーを使用する本格矯正では、オーラルケアを怠るとむし歯発生や歯周病悪化が起こる可能性があります。

矯正歯科治療では歯根吸収・歯髄変性・歯肉退縮などの副作用が起こる可能性があります。

≪矯正治療内容 詳細≫
動的治療期間:約2年間、治療費用:60万円

 

——記事の執筆者紹介——
矯正歯科治療でお悩みの患者様の疑問・不安へお応えします!
知多 矯正歯科治療相談室 運営
久野歯科医院院長 久野昌士

【院長の主な略歴について】
・昭和57年:東京歯科大学を卒業。
・昭和57年から昭和61年:東京歯科大学補綴第二講座に在籍する。
・昭和62年から平成1年:愛知学院歯学部口腔外科第二講座研究生。
・名古屋YDCAスタディグループに所属
「コンプリートデンチャー研究会」へ在籍しつつ
名古屋顎矯正研究会等へと参加。
より良い矯正歯科治療を患者様へとご提供できるよう、
 新たな治療技術・歯科知識を積極的に取り入れる。
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矯正歯科治療に必要な抜歯とは?

歯列矯正での抜歯について

矯正歯科治療時に必要な移動スペースの獲得法の一つ

知多 矯正歯科治療相談室を運営している院長の久野昌士です。
こちらのブログでは「矯正歯科治療に興味はあるけれど治療に踏み出せない…」「どういったリスクがあるのか心配…」「治療は痛いのかな?」といった不安や疑問などにお答えしています。

【記事の更新日】2023年6月9日(金)14:30

今回は矯正治療時に行う場合のある抜歯に関する話題です。

 

歯を適正な位置へと移動させるためのスペース不足を補う方法の一つに抜歯があります。
抜歯部位の殆どが第1小臼歯か第2小臼歯となっています。

上下顎前突の場合には、一般的に上下の第1小臼歯の4歯を抜歯して抜いたスペースを利用します。
そして前歯列を後方へと移動させて、口元の緊張を改善します。
上顎前突では、上顎の第1小臼歯の2歯を抜歯し、臼歯関係を治療する場合もあります。

 

叢生・八重歯の場合には、やはり上下の第1小臼歯の4歯を抜歯し抜いたスペースを利用し、叢生や八重歯の矯正治療を行います。
叢生や八重歯は、歯列不正の程度により抜歯を行なわず治療できる可能性もありますので、しっかりとした治療前の診断が必要となります。

 

もちろん、歯を抜かずに矯正歯科治療ができるに、越したことはありませんが、患者様には矯正治療を受ける際、抜歯することによる利益(ベネフィット)と不利益(リスク)を考え、利益の方が上回れば抜歯しての治療をご検討いただくのが良いかと思います。

 

矯正治療により、口呼吸が改善される大きなメリット

抜歯を行い、矯正歯科治療を行うことで突出していた上下顎の前歯が後方へと移動し、正しい位置に改善されます。これによって口が簡単に閉じられるようになります。口呼吸が防止できる細菌ウイルスなどの病原体は、口から体内へと侵入します。そのため、ある意味で口呼吸は万病の元です。

また口呼吸しなくなることで口腔乾燥状態がなくなり、口臭の発生を減少させる等の予防が可能となります。口元の緊張もなくなり、横顔が美しく改善をされます。

 

■下記にその一例を示します。

上は抜歯治療前の横顔です。口元の緊張と突出がみられます。

 

抜歯治療後の横顔です。美しい横顔になりました。

 

お口の中の疾患の予防

八重歯であれば抜歯を行って矯正歯科治療をする事で、ブラッシングが簡単に効率よく、そして確実に行えるようになります。そして歯と歯の間のプラークコントロールも簡単にできるようになることで、むし歯の発生を抑制でき、歯周病を予防しやすくなります。
プラークの取り残しがなくなれば、口臭の発生も少なくすることができます。

 

歯並びがガタガタであったり、歯列に不正があった場合 大きなリスクがあります。今 現在はむし歯が無かったとしても、今後 歯肉炎程度の歯周病であっても起きた際はむし歯も発生します。
その後にむし歯治療を行い、その結果 大きく歯質を失って歯冠修復をしても、不正な歯の位置は変えることができません。将来、歯周病が進行し歯を失う大きな原因となります。

このようなリスク面を考えると、適正な抜歯を行い、矯正歯科治療を進めることで将来的に歯を失う確率を低くすることができます。

 

抜歯の対象となる歯について

抜歯の対象となる歯は第1小臼歯や第2小臼歯が多いのですが、歯の生えている場所が極端に違っていたり、むし歯により歯の根の治療や大きく修復されている歯がある場合、その歯を抜歯することもあります。

異所萌出や矮小歯、埋伏している過剰歯なども抜歯の対象となります。また正常に歯が萌出していない、埋伏している歯でも治療に必要があり、利用可能であれば開窓という処置を行います。これによって、埋まっている歯をひっぱり出す(牽引)ことも考えます。

親知らずが利用可能あれば、抜歯をせず、利用することも考えられます。

 

上記の患者様では、上顎左側犬歯の異所萌出のため、犬歯を抜歯しました。

 

上のレントゲン写真では歯牙腫のため、下顎左側犬歯の萌出不全となっています。

 

下顎左側犬歯の牽引を牽引して、歯列弓に取り込みます。

 

矯正治療を担当する歯科医師は、抜歯というものを決して安易には考えていないことを是非ともご理解いただければ幸いです。
患者様のお口・歯の状態等を確認の上、その患者様にとって最善と考えられる治療計画の立案及び治療を行うことが重要と考えます。

 

——記事の執筆者紹介——
矯正歯科治療でお悩みの患者様の疑問・不安へお応えします!
知多 矯正歯科治療相談室 運営
久野歯科医院院長 久野昌士

【院長の主な略歴について】
・昭和57年:東京歯科大学を卒業。
・昭和57年から昭和61年:東京歯科大学補綴第二講座に在籍する。
・昭和62年から平成1年:愛知学院歯学部口腔外科第二講座研究生。
・名古屋YDCAスタディグループに所属
「コンプリートデンチャー研究会」へ在籍しつつ
名古屋顎矯正研究会等へと参加。
より良い矯正歯科治療を患者様へとご提供できるよう、
 新たな治療技術・歯科知識を積極的に取り入れる。
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